先端錯体工学研究会は、金属錯体化学・有機金属化学を基盤としてその応用面の発展を希求する活動を行う研究会であり、金属イオンを含む高次の複合系、生理活性金属錯体や金属タンパク質のかかわるバイオシステム、センサー、光エネルギー変換システム、機能性錯体を用いる光学活性物質や高分子、セラミックスその他有用物質の合成システムの設計と構築など、既成の学問領域にとらわれず新たな研究分野の開拓を目指しています。本研究会を支える会員は、化学だけでなく、生物学、物理学、工学、医学、薬学、獣医学、農学など多様な関連分野を専門とする研究者や技術者です。
本研究会の英文名The Society of Pure & Applied Coordination Chemistry (SPACC)が示すように、本研究会の活動分野は基礎研究を含めて広汎な応用研究に広がる数多くの境界分野を網羅した学際領域で、本研究会会員は、多様な分野で活躍しておられます。本研究会への参加により、会員は金属錯体という共通の概念を持ち、異分野の研究者と交流することで刺激を受け、多様な分野の成果や考え方を自分の研究に生かせるメリットがあり、シンポジウムなどでの講演は大変刺激的で、非常に活発な討論が行われています。
本研究会は、錯体化学と錯体工学を発展させるために、海外の研究者との研究交流を推進しています。このため、国際シンポジウムを毎年主催し、1年毎に国内と海外で交互に開催し、世界の研究者と交流しています。2019年までに開催したSPACC国際シンポジウムは26回に及び、中国、台湾、ニュージーランド、カナダ、ナミビア、イギリスなどの各地で開催しております。また、本研究会は、若手研究者および学生の支援と育成に力を入れており、これらの国際シンポジウムには学生が参加しやすい登録費を設定し、さらに優れた研究発表に賞を授与するなど、国際交流の経験を積むための絶好の機会を提供しています。幸いなことに、国内外で開催された国際シンポジウムに多くの学生の皆さんが参加して発表し、海外の研究者や学生と活発な質疑応答を通じて交流を深めてきました。
このように早くから国際舞台で積む経験は非常に貴重であり、国際交流でよい刺激を受けて自身の研究・学習意欲を向上させることができるものと考えております。コロナ禍によって海外渡航が難しくなり、face to faceの国際交流が制限されたことは、むしろその重要性を改めて認識させました。今後も最善の注意を払いながら国際シンポジウムを企画して、多くの学生や若手研究者が積極的に参加できるようにサポートして参ります。錯体化学と錯体工学の発展と世界での活躍を夢見る多くの若手研究者や学生が、第一線で活躍する国内外の研究者や技術者と一緒に、本研究会で活動されることを心から願っております。
2023年4月
先端錯体工学研究会会長 佐藤光史
工学院大学名誉教授
|